
カラスの味を聞かれることが、とにかく多いんです。「カラスを食べています」と言うと、ほぼ必ずこう返ってきます。
「えー! カラスって食べれるの?」
「育てたカラスなんですか?」
「東京のカラスも食べれるの?」
気持ちはよく分かります。ゴミ置き場を荒らしている、あの黒い鳥ですから。
ただ、うちは実際に仕入れて、炭火で焼いて、お客さまにお出ししています。この記事では「〜と言われている」ではなく、自分で仕入れてさばいて焼いている立場から、カラスの味を正直に書きます。美味しいところも、正直ここは難しい、というところも含めてです。

まず結論|カラスは食べられます。しかも美味しい
カラスは日本では狩猟鳥獣に指定されている鳥です(カラス類のうち、ハシブトガラス・ハシボソガラス・ミヤマガラスの3種)。猟期の狩猟に加えて、農作物被害を防ぐための有害鳥獣捕獲でも獲られていて、いずれも法にのっとって捕獲された個体が食肉として流通しています。当店に入るのも、もちろんそうした個体です。
もちろん、公園にいるカラスを捕まえてきて食べる、という話ではありません。「どのカラスでもいい」わけでもない。カラスの味は、その個体が何を食べて育ったかで、はっきり変わります。ここが今回いちばん書きたいところです。

実際の味|「高級な地鶏」に近い
ここが記事の核心なので、聞いた話ではなく、自分の口で確かめたことだけを書きます。
ひとことで言うと、カラスは、高級な地鶏を食べているような味です。地鶏のような歯ごたえと旨味があり、そこに野生の鴨のような味の濃さが乗ります。この「濃さ」の出方は種類によって違い、ハシボソガラスは地鶏に近く、ハシブトガラスはより野趣が強い、という関係です。
見た目と、1羽から取れる量
意外に思われるのが、量の少なさです。1羽から取れる可食部は、鴨の3分の1ほどしかありません。だいたい山鳩と同じくらい、と言えば伝わるでしょうか。
肉は濃い赤身です。ただ、色の濃さから想像されるような「野鳥のクセ」はほとんどなく、驚くほど食べやすい肉です(ほかの野鳥との比べ方は食べられる日本の野鳥図鑑にまとめています)。
味
種類によってかなり違うので、分けて書きます。
- ハシボソガラス……もう地鶏そのまま、という感じです。とても食べやすい。レバーのような血の味もありません。
- ハシブトガラス……大きく育った個体はレバーのような血の風味が出てきます。ただ、それも鴨より穏やかで、私にはむしろ好ましい風味に感じられます。
カラスの味を「酸味がある」と表現されることもあるようですが、うちで扱っている個体に関しては、私はそこまで酸味を感じたことはありません。
正直に書いておくと、難点は味ではなく量です。可食部が少ないので、たとえば焼き鳥のように何本も出そうとすると、とんでもない値段になってしまいます。
食感
食感は固めです。放し飼いの地鶏を想像していただくのがいちばん近い。ブロイラーのようなやわらかさを期待すると裏切られますが、噛むほどに旨味が出るタイプの肉です。
皮と骨
皮は少なく、鶏皮のような一品を作ることはできません。硬いのですが、皮そのものの味が濃いので、うちでは剥がさずにロースの部分につけたまま焼いています。
味を決めるのは「そのカラスが何を食べていたか」
猟師の世界では当たり前の話ですが、食べたものが、そのまま肉の風味になります。これはカラスに限った話ではありません。うちで人気の巨峰畑の穴熊も、巨峰を食べて育つから脂がフルーティになるわけです。
つまり、街の生ゴミを食べているカラスと、山の木の実や畑の作物を食べているカラスでは、まったく別の食べ物だと考えてください。「東京のカラスも食べれるの?」というご質問への答えは、ここにあります。
ハシボソガラスとハシブトガラス
うちには両方入ります。違いはこうです。
- ハシボソガラス……体が小さめで、可食部はさらに少なめ。山の木の実や畑の野菜が主食です。
- ハシブトガラス……大柄で、可食部も多め。果物や木の実、畑の野菜のほかに、小動物も食べます。この食性の幅が、風味の強さにつながっています。
私が好きなのは、断然ハシブトガラスのほうです。「都会のゴミを漁っているほう」というイメージが強い種類ですが、山で育った個体は、まったくの別物です。
産地
ハシブトガラスは長野と岡山、ハシボソガラスは函館から入っています。いずれも、山の木の実や畑の作物を食べて育った個体です。
季節による差
あります。夏はやせている個体が多いので、うちでは使いません。同じ産地の同じ種類でも、時期によって身の入り方がまるで違います。

あまからくまからでは、炭火焼きでお出ししています
なぜ炭火焼きしかやらないのか
正直に言うと、他の調理法を試していないからです。理由は単純で、可食部が少なすぎるから。
たとえばカラスをパスタソースにしようとすると、1皿6,000円くらいの料理になってしまいます。それはもう、お客さまに気持ちよく食べていただける値段ではありません。少ない身をいちばん美味しく、いちばん納得のいく形でお出しできるのが炭火焼きでした。
下処理は、特にしていません
意外に思われるかもしれませんが、血抜きも漬け込みも寝かせも、特別な下ごしらえは何もしていません。そのまま炭火にかけています。
ジビエというと「臭みを消す下処理が必要」と思われがちですが、状態のいい個体は、余計なことをしないほうが美味しい。カラスに関しては、私はそう考えています。
家庭で食べる場合の注意
一般には流通していないので入手経路はかなり限られますが、もし手に入った場合のために書いておきます。
- 生食は絶対に避けてください。食中毒や寄生虫のリスクがあります。中心部までしっかり火を通してください。
- 皮は硬いので、家庭で調理するなら剥いでからのほうが無難です(うちは炭火だからこそ、つけたまま焼いています)。
- 肉質が硬めなので、家庭の火力ならミンチ・煮込み・唐揚げが扱いやすいと思います(うちが炭火焼き一本なのは、炭火なら硬さを活かしたまま焼き上げられるからです)。
なぜ、うちはカラスを出すのか
きっかけは、正直なところ卸の方の一言でした。「カラス、美味しいですよ」と言われて、興味を持ったんです。実際に焼いてみたら、その通りでした。
そしてもう一つ。カラスは、鳥類の中で農作物被害額が最も大きい鳥です。農林水産省の令和6年度の集計では、カラスによる農作物被害額は約13億6千万円。これはシカ(約78億5千万円)、イノシシ(約44億6千万円)に次いで、全鳥獣の中で3番目の大きさです。
それだけ駆除されているのに、多くはそのまま廃棄されています。「駆除して終わり」ではなく「食べて活かす」。うちが《食べる動物図鑑》というコースをやっている理由も、そこにあります。
カラスが食べられるお店
ジビエ料理「あまからくまから」の人形町店・浅草店でお出ししています。コースの内容は、それぞれのご案内ページをご覧ください。
※両店とも全席予約制・コース制です。カラスは単品のみでのご提供はしておらず、コースに追加していただく形になります。入荷状況によってお出しできない時期もありますので、ご予約時にお問い合わせください。
カラスを食べるなら秋です。ほかの秋のジビエとあわせては熊は3分の1、穴熊は当たり年|2026年秋のジビエ ベスト10に書きました。
ジビエ料理店「あまからくまから」では、季節でご提供メニューが変わります🥩🌿
現在ご提供している料理は、各グルメサイトでご確認いただけます。
▼あまからくまから 人形町店 の予約はこちら
▼あまからくまから 浅草店 の予約はこちら

