
福岡の巨峰畑。実が色づき、収穫を待つこの季節に、房が食べられる被害が出ます。その相手のひとつが穴熊です。
畑を守るために有害鳥獣として駆除された一頭が、
こうして私たちのところに届きました。
畑を荒らしていたのは、穴熊でした
届いた個体を捌いてみると、脂が白く、澄んでいました。包丁を入れると、指の熱で溶けはじめるくらいのやわらかさです。

火を入れて口に含むと、獣くささはほとんどありません。かわりに、果実を思わせる甘い香りがかすかに残ります。完熟した巨峰を食べて育った身体が、そのまま味に出ているのだと思います。私たちがこの個体を「巨峰穴熊」と呼んでいるのは、そういう理由です。
穴熊は、食べていたものが味に出やすい動物です。栗の多い山なら栗の、山葡萄の沢なら山葡萄の風味をまといます。畑と獣と、その年の実りが重なったときにだけ出会える味で、狙って仕入れられるものではありません。
食べたものが、そのまま脂になる
牛や鹿のような反芻動物は、胃の中の微生物が餌の脂をいったん作り変えてしまいます。だから何を食べたかは、脂の質にはあまり出てきません。
穴熊はイタチ科で、胃はひとつです。食べたものの脂が、作り変えられないまま身体に蓄えられていきます。ドングリを食べて育ったイベリコ豚の脂が特別に扱われるのも、同じ理由です。豚と穴熊は、食べたものが脂にそのまま出る側の動物なのです。
もうひとつは、果実の糖です。甘いものを大量に食べた身体は、その糖から脂肪をつくります。このときできるのが、オレイン酸のような融点の低い脂です。融点が低いというのは、低い温度で溶けるということ。体温のあたりで緩みはじめる脂は、口に入れた瞬間に流れて、香りを一度に立ち上げます。
私たちが「甘い」と感じているのは、脂に糖が入っているからではありません。溶ける速さと、酸化していない澄んだ脂の香り。それを甘さとして受け取っています。
巨峰畑の穴熊は、この二つが重なった一頭です。完熟した実を、収穫期のみじかいあいだ食べ続けた身体。脂が白く澄んで、包丁を入れると指の熱で溶けはじめるのは、偶然ではありません。
逆にいえば、実りが変われば脂も変わります。秋が深まって柿が落ちるころには、柿を食べて育った「柿穴熊」が入ってきます。同じ穴熊でも、巨峰の夏とは別の甘さです。
穴熊という肉について
穴熊は、もともと流通量のとても少ない肉です。鹿や猪のようにまとまって手に入ることはなく、扱っている店もかぎられます。
味の性格も違います。鹿の赤身の潔さ、猪の力強さに対して、穴熊は脂の甘さで記憶に残る肉。当店ではジビエ肉の女王と呼んでいます。獣肉に慣れていない方でも、比較的食べやすい部類です。
巨峰穴熊を味わうコース
穴熊zukusiコース(全9品/14,800円 税込・2〜6名様)
穴熊のリエットとエゾ鹿のパテドカンパーニュから始まり、たたきサラダ、炭火焼、じっくり仕込んだ角煮、すき焼き鍋へ。〆は稲庭うどん、デザートにこけもも&ローズヒップのアイスを添えます。
同じ一頭を、火の入れ方を変えてお出しするコースです。たたきのなめらかな甘み、炭火焼の香ばしさ、時間をかけて煮含めた角煮のとろけ方。その違いを並べて味わえるのが、このコースの本題だと思っています。
至福のグルメコース(全8品)
穴熊すき焼きに、ヒグマの赤ワイン煮も加わる、当店の人気No.1です。いろいろな動物を一度に試したい方には、こちらを。
ご予約について
巨峰穴熊は8月10日に入荷しましたが、数に限りがあり(現在5頭分)、なくなり次第終了となります。
当店は全席予約制、お食事はコースのみのご用意です。ジビエがはじめての方には「はじめてジビエ安心コース」もございますので、お気軽にご相談ください。
畑では困りものだった一頭が、料理になるとこうなります。よろしければ、確かめにいらしてください。
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