
ハクビシンは果実が大好きな動物です。
当店はジビエ料理店として、果樹園で捕獲されたハクビシンを食材として仕入れています。仕入れる立場から言うと、「何を食べていたか」がそのまま肉の味を決めます。果樹を食べていた個体は本当に美味しく、そうでない個体はまるで違います。
この記事では、ハクビシンが何を食べるのか、どこから侵入してどんな被害を出すのか、そして有効な対策と捕獲のルールを整理します。
ハクビシンはどんな動物か
ジャコウネコ科の中型獣です。東京都環境局の資料によると、成獣の体長は40〜60cm、体重は2.0〜5.5kg。鼻筋に白い線が通っているのが名前の由来で、この白線が見分けのポイントになります。
タヌキやアライグマと混同されがちですが、ハクビシンは体つきが細長く、尾が長いのが特徴です。
ハクビシンは何を食べるのか
雑食性です。東京都環境局は「果実や野菜等の植物質から、小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、甲殻類、昆虫類等の動物質のものまで幅広く食べる」としています。
一番の好物は果実
なかでも果実を強く好みます。ブドウ、ミカン、カキ、リンゴ、モモ、イチジク、ビワ、アケビ、キイチゴ。熟して甘くなったものから狙われます。
農林水産省の被害防止マニュアルには、夏みかんなどを「樹上から頭を下にして」食べるという記述があります。木登りが得意なので、地上から手が届かない高さの果実も食べられてしまいます。
野菜と生ゴミ
トウモロコシ、スイカ、メロン、トマト、イチゴなど、甘みのある作物も被害に遭います。畑だけでなく、屋外に置いた生ゴミや、庭に放置した収穫残さも餌になります。
動物質のもの
小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、甲殻類、昆虫類も食べます。ただし主食は果実で、動物質のものは補助的な位置づけです。
ハクビシンは猫を食べるのか
「ハクビシンは猫を食べますか」という疑問をよく見かけます。
小型哺乳類も食べる雑食性ではありますが、成猫を襲って食べる動物ではありません。実際に問題になるのは、屋外に置いた猫用のエサや生ゴミに引き寄せられることのほうです。餌場が重なるため、庭先で鉢合わせすることはあります。
いつ、どこに現れるか
夜行性です。 農林水産省のマニュアルでは、夜中に一度休息してから朝方まで餌を探して行動するとされています。昼間は樹のうろや建物の屋根裏で休んでいます。
木登りが非常に得意です。 電線を伝って歩くこともあります。塀や柵を越えるのではなく、上から入ってくると考えたほうが実態に近いです。
8cm四方の隙間があれば侵入できます。 屋根と壁の取り合い、換気口、軒下、床下の通気口。人間の目には隙間に見えない場所からも入ります。
水辺を好みます。 河川や用水路、排水路が移動経路になります。自宅の近くにこうした水路があると、行動圏に入りやすくなります。
繁殖
東京都環境局によると、一年中繁殖が可能で、年1回、通常1〜4頭を出産します。屋根裏がそのまま出産場所になることもあります。
一度住みつかれると数が増えるため、「1頭見かけた」段階での対処が結果的に一番早く済みます。
農作物被害の現状
農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況」によると、令和6年度の野生鳥獣による農作物被害額は全国で187億5300万円でした。前年度から増加しています。
ハクビシンはこのうちの一部ですが、被害が果樹と野菜に集中するのが特徴です。しかも一晩で広い範囲を回るため、収穫直前の畑がまとめてやられることがあります。
住宅への被害
屋根裏に住みつかれると、糞尿による天井のシミと臭い、断熱材の損傷、ノミやダニの発生といった被害が出ます。夜間の足音で眠れないという相談も多い被害です。
対策
誘引物を断つ
まずここからです。収穫しないまま残した果実、地面に落ちた果実、屋外の生ゴミ、屋外に置いた猫やペットのエサ。これらを片づけるだけで来なくなるケースがあります。「餌がある場所」として認識させないことが基本です。
侵入口をふさぐ
8cm四方が目安です。屋根と壁の隙間、換気口、軒下、床下の通気口を点検し、金網やパンチングメタルでふさぎます。
ただし、中にいる状態でふさぐと閉じ込めてしまいます。出入りの時間帯を確認してから、いないタイミングでふさいでください。
電気柵
農林水産省のマニュアルでは、ハクビシン対策の電気柵として地上5cmと10cmの2段に柵線を張る方法が示されています。低い位置に張るのは、体高が低く、下から潜り込もうとするためです。
木登りが得意なので、柵だけでは樹上から入られます。果樹の場合は、枝が塀や電線に接していないかも確認してください。
捕獲には許可が必要
ハクビシンを捕まえる場合は、狩猟免許による狩猟か、自治体の有害鳥獣捕獲の許可が必要です。許可なく罠をかけたり捕獲したりすることはできません。
手続きは自治体によって異なります。まずはお住まいの市区町村の担当窓口にご相談ください。
なお、ハクビシンは環境省の「生態系被害防止外来種リスト」に総合対策外来種として掲載されていますが、特定外来生物には指定されていません。アライグマとは扱いが異なります。
捕獲された個体を、食肉として活かす
ここからは、ジビエ料理店としての話です。
駆除されたハクビシンの多くは、そのまま廃棄されています。体重3〜4kgと小さく、可食部が少ないため、手間に見合わないというのが理由です。
ただ、果樹を食べて育った個体の脂は、お菓子を作っているような甘い香りがします。当店では年に5頭ほどを神奈川と千葉の処理施設から仕入れ、すき焼きなどでお出ししています。
被害を出した動物を食べることが対策そのものになるわけではありません。それでも、捨てられていたものが料理として喜ばれる形になるなら、意味のあることだと考えています。
→ ハクビシンは美味しい? 年に5頭しか入らない肉を、すき焼きにしている店主が書きます
よくある質問
Q. ハクビシンは何を食べますか?
A. 雑食性で、果実を最も好みます。野菜、生ゴミのほか、小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、甲殻類、昆虫類も食べます。
Q. ハクビシンは猫を食べますか?
A. 成猫を襲って食べる動物ではありません。屋外の猫用のエサに引き寄せられて現れることのほうが実際の問題です。
Q. ハクビシンはどこから入ってきますか?
A. 8cm四方の隙間があれば侵入できます。木登りが得意で電線も歩くため、屋根まわりからの侵入が中心です。
Q. ハクビシンは特定外来生物ですか?
A. 指定されていません。環境省の生態系被害防止外来種リストには総合対策外来種として掲載されています。
Q. 自分で捕まえてもいいですか?
A. できません。狩猟免許による狩猟か、自治体の有害鳥獣捕獲の許可が必要です。
