ハクビシンは東南アジアや中国南東部、台湾などに広く分布するジャコウネコ科の野生動物です。日本には外来種として持ち込まれ、現在ではほぼ全国的に生息域を拡大しています。
ハクビシンは深刻な農作物被害をもたらしており、令和4年度の被害金額は約3億6,000万円です(※)。多くの自治体がハクビシンの防除対策に頭を悩ませる一方で、駆除した個体を廃棄するのではなく、食肉(ジビエ)として有効活用する取り組みも始まっています。
この記事では、外来種であるハクビシンの生態や、どんなハクビシンが美味しいのか?一般的な駆除方法、駆除する際の注意点について解説します。
※ 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和4年度)」
ハクビシンの特徴や行動特性
ハクビシンは「白鼻芯」の名のとおり、鼻から頭頂にかけて伸びる白い線が特徴の野生動物です。
ここでは、ハクビシンの形態的特徴や、食性・行動特性・繁殖活動について紹介します。
ハクビシンは体高19cm程度の中型獣類
ハクビシンは足が短く、体高が19cm程度の中型獣類です。成獣では頭胴長(鼻先から尾の付け根まで)が60~65cm、尾長(尾の付け根から先端まで)が40cm程度と、細長い体型をしています(※)。
オスの大きな個体では、全長が100cmを超えることもあります(※)。タヌキやアライグマ、アナグマと外見が似ていますが、細長い体型や黒っぽい手足、顔の中央にある白い線などの特徴から区別することが可能です。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-アライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ-(中型獣類編)」
ハクビシンの美味しさの訳は?≪食べる動物図鑑ハクビシン≫
雑食性で何でも食べるが、甘いものを特に好むため、とても美味しい脂です。
ハクビシンは雑食性で、何でも食べられます。特にアケビやキイチゴなどの甘い果実を好む傾向にあり、果樹園の袋掛けされたブドウや、ビニールハウスのイチゴなどを食害するケースもあります。
食害を防ぐための駆除もおこなわれており、このようなハクビシンは、とても美味しいことが知られてきました。
当店で果樹を荒らしていたハクビシンを食べたお客さんは、「今までで一番美味しい肉かもしれない!」とまでおっしゃられます。
甘い脂が特徴で肉は少ないのでお鍋で食べるのが一般的ですが、焼肉もいいかもしれません。
当店では、みかん畑を荒らす猪や、柿を食べる穴熊も提供していますが、甘い果実が大好きなハクビシンも間違いなく美味しいジビエの一つです。
『キョンとハクビシンの駆除応援鍋』
昆布で出汁をとり、白菜や人参、ごぼう、大根、かぼちゃ、ねぎ、マイタケと鍋にいれる。
味噌を上に乗せて煮ることで、煮えた時に味噌のいい香りが漂います。
キョン、やハクビシンの肉は薄切りにして盛り付ける。
▼あまからくまから 人形町店 の予約はこちら
▼あまからくまから 浅草店 の予約はこちら
また農作物以外では、鶏への嗜好性が高い生き物です。鶏小屋に侵入し、大きな被害を与えた事例も報告されています。
このようにハクビシンは、農家や畜産家にとって厄介な食性を持った害獣です。東京都だけでも、令和5年中に626頭のハクビシンが駆除されています(※)。
夜行性のため昼間はほとんど姿を見せない
ハクビシンは夜行性の生き物です。昼間は人気のない神社仏閣や、住宅・倉庫などの天井裏で休息し、夜になるとねぐらから出て活動を始めます。個体によっては、夕方や朝方など、陽のある時間帯に出没することもあります。
ハクビシンは木登りを得意としており、細い電線の上などをつたって移動できることから、都市環境下でも生活することが可能です。実際に東京都では、23区のほぼ全域でハクビシンの姿が目撃されています(※)。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」p11
繁殖は年間を通じて行われ、一度に1~4頭の子を産む
ハクビシンは繁殖力が高く、一度に1~4頭の子を出産します(※)。
繁殖はほとんど年間を通じて行われ、繁殖期は1月~9月、出産期は3月~11月と推定されています。他の中型獣類と異なり、特定の繁殖時期がありません(※)。
ハクビシンの子は、生後1カ月でねぐらから出て歩きはじめ、生後3カ月経つと成獣と同程度の大きさに成長すると言われています(※)。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」p11
ハクビシンを駆除する方法
ハクビシンは果樹や野菜などを食害し、深刻な農業被害をもたらしていることから、一部地域では自治体による駆除活動が行われています。
ハクビシンの駆除方法は、大きく3つに分けられます(※)。
ハクビシンの駆除方法 | 特徴 | |
---|---|---|
わな | 箱わな |
|
くくりわな |
| |
銃器(散弾銃) |
|
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-」p30
箱わなによる捕獲
ハクビシンの捕獲には、箱型のわな(箱わな)を用いることが一般的です。
箱わなは金網やアルミニウムでできており、軽量なことから、持ち運びが便利という特徴があります。またハクビシン以外の野生動物を誤って捕獲した際も、安全に放獣することが可能です。
箱わなには、わなを作動させるのに踏み板を用いるもの(踏み板式)と、餌を吊るしたフックを用いるもの(フック式)の2種類があります。中型のわなの場合、踏み板式は1万円~1万5,000円程度、フック式は6,500円~1万2,000円程度の費用がかかります(※)。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-」p34
くくりわなによる捕獲
くくりわなは、輪にした針金やワイヤーをけもの道などに仕掛け、野生動物の体の一部をくくって捕らえるわなです。軽量で持ち運びがしやすく、箱わなよりも安価(6,000円~1万2,000円程度)というメリットがありますが、捕獲後の処理が難しいという欠点もあります(※)。
ハクビシンは果実を好むため、誘引用の餌には臭気が強い果物(黒くなったバ
ナナなど)を用いることが一般的です。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-」p30
銃器による捕獲
ハクビシンの駆除には、銃器(散弾銃)が使用されることもあります。わなによる捕獲と異なり、遠くの個体を駆除できるのが強みです。
ただし、発砲できる場所が限定される他、管轄の警察署に猟銃所持許可の申請手続きをしなければならないという欠点もあります(※)。
ハクビシンを駆除するときの注意点
ハクビシンは自治体の防除事業だけでなく、専門業者による駆除も行われています。自治体から許可を得ている場合は、自分でわななどを仕掛け、駆除することも可能です。
ハクビシンを駆除するときの注意点は3つあります。
- ハクビシンは運動能力が高く、噛みつくこともある
- 野生動物のため、感染症のリスクがある
- ハクビシンの駆除活動には自治体の許可が必要
ハクビシンは運動能力が高く、噛みつくこともある
ハクビシンは運動能力が非常に高い生き物です。飼育個体の観察研究では、高さ110cmまでジャンプできることが知られています(※)。また「樹上生活者」と呼ばれるほど木登りを得意としており、足場の悪い場所でもすばやく移動できます。
不用意に近づくと、噛みつかれて怪我をする恐れがあるため注意しましょう。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-」p8
野生動物のため、感染症のリスクがある
ハクビシンは野生動物であり、ノミやダニが付着しています。ノミやダニが媒介する病気や、糞尿などを経由して伝搬する感染症に注意が必要です。
ハクビシンの駆除を行う際は、皮手袋などを装着して手を保護しましょう。また駆除作業の後は必ず手洗いをし、十分に手指を消毒してください。
ハクビシンの駆除活動には自治体の許可が必要
ハクビシンをはじめとした野生鳥獣は、鳥獣保護法(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)により保護されています。下記の狩猟期間を除いて、自治体の許可なく駆除活動を行うことはできません(※)。
地域 | 狩猟期間 |
---|---|
北海道以外の区域 | 毎年11月15日~翌年2月15日(猟区内は毎年10月15日~翌年3月15日) |
北海道 | 毎年10月1日~翌年1月31日(猟区内は毎年9月15日~翌年2月末日) |
また狩猟を行うためには、網猟免許やわな猟免許、第一種銃猟免許、第二種銃猟免許など、駆除方法に応じた狩猟免許の取得が必要です。
このようにハクビシンは、わなや銃器などを用いて、猟師による駆除活動が行われています。近年は駆除した個体を廃棄するのではなく、食肉(ジビエ)として有効活用する取り組みも始まりました。
しかし、ハクビシンの食肉利用にはさまざまな課題があります。ハクビシンなどの中型獣類は、小さくて肉が取れないため、買い取りをする飲食店があまり多くありません。
食肉としての需要が伸び悩んでいることから、処理施設の維持管理も困難になっています。厚生労働省の統計によると、イノシシ専用の処理施設は144箇所、シカおよびイノシシ専用の処理施設は347箇所あるのに対し、それ以外の野生鳥獣も取り扱う処理施設は全国に273箇所しかありません(※)。
そこで「あまからくまから」では、猟師さんや処理施設を食べて応援するため、ハクビシンのジビエ料理を提供しています。「ハクビシンとキョンの駆除応援鍋」是非食べてみてください!
※ 厚生労働省「令和5年度野生鳥獣肉の衛生管理等に関する実態調査の結果について」p4
▼あまからくまから 人形町店 の予約はこちら
▼あまからくまから 浅草店 の予約はこちら