
トドは例年10月~翌5月頃に北海道や根室海峡に来遊する、アシカ科の海棲哺乳類です。
北海道では古くから、原住民族であるアイヌ民族にとって貴重なタンパク源となってきました。2022年4月に完結した『ゴールデンカムイ』にも、エタシぺ(トド)の脂身を炙り焼きにして食すシーンが登場します。
またアシㇼパさんは「エタシぺ(トド)とキムンカムイ(ヒグマ)はどちらも強いカムイ(神)だから喧嘩する話がいっぱいある。」と話しています。
実際にトド肉は、どのような味がするのでしょうか。この記事では、トド肉の特徴や魅力、美味しく食べる方法を紹介します。
トド肉は美味しく食べられる?
トドは漁網を食い破ったり、網に入った魚を食べたりすることから、「海のギャング」の異名を持つ生き物です。トドによる漁業被害は、年間約7.9億円(令和4年度)とも言われており、地元ハンターによる駆除が行われています(※1)。
近年では、駆除したトドを「トド肉」として有効活用する例が増えてきました。水産庁が平成26年に公表した「トド管理基本方針」でも、食用に向けた水産資源として、トドの個体数を管理していく方針が示されています(※2)。
トド肉というと、臭みがあり、クセが強いというイメージがあるかもしれません。しかし、きちんと下処理されたトド肉は意外にも臭みが少なく、とても美味しいお肉です。
味は鹿肉やクジラ肉、食感は牛肉に近いと言われており、海のジビエとして注目されています。礼文(れぶん)島や羅臼(らうす)町など、トド猟が盛んな地域では、赤身部分の生食(刺身など)も可能です。
最近は北海道のハンターが捕獲した、新鮮なトド肉を提供するジビエレストランも増えつつあります。北海道の豊かな自然環境が育んだ、美味しいトド肉を是非食べてみてください。
※1 水産庁「トドによる沿岸漁業への被害」p1
※2 水産庁「トド管理基本方針」p4
トド肉の特徴や魅力
トド肉は年間の駆除頭数制限により、希少性が高いお肉です。食感は硬そうなイメージがあるかもしれませんが、実はジューシーで柔らかく、噛み応えは豚ロース肉とほとんど変わりません。
また栄養価が高いのも、トド肉の魅力の一つです。タンパク質が豊富に含まれており、タウリンやグルタミン、アラニンなどの重要なアミノ酸も摂取できます。
ここでは、トド肉の特徴や魅力を4つ紹介します。
- 年間の駆除頭数制限により、希少性が高い
- 肉質は豚ロース肉よりも柔らかい
- クジラ肉に匹敵するほどタンパク質が豊富
- 脂質は多いが、不飽和脂肪酸の比率が高い

年間の駆除頭数制限により、希少性が高い
トドは深刻な漁業被害をもたらす半面、国が指定する準絶滅危惧種でもあります。水産庁が定める「トド管理基本方針」では、トドの駆除頭数制限を設けており、年間約500頭しか狩猟できません(※)。
そのためトド肉は希少性が高く、礼文島や羅臼町などの一部地域を除いて、北海道でも珍しいお肉です。トド肉を食べてみたい方は、あまからくまからがおすすめです(笑)
トド猟は11月~3月頃に行われるため、トド肉は冬から春にかけて流通します。入荷分がなくなり次第、トド肉の提供は終了するため、お早めにご予約ください。
肉質は豚ロース肉よりも柔らかい
トドをはじめとした海棲哺乳類は、海の中で長く潜水するため、筋肉が発達しています。しかし意外にも肉質は柔らかく、過去の研究結果から、筋肉の硬さは豚ロース肉と同程度であることが分かっています。
十分に血抜きをしたトド肉なら、塩コショウをまぶし、フライパンで軽くソテーするだけで美味しく食べることが可能です。
クジラ肉に匹敵するほどタンパク質が豊富
トド肉はジューシーで柔らかいだけでなく、栄養価も高いお肉です。特にタンパク質は、クジラの赤身肉に匹敵するほど豊富に含まれています。
以下の表は、トド肉と各種食肉の栄養成分を比較したものです。トド肉の可食部100gあたりのタンパク質は23.8gと、非常に高タンパクなお肉であることが分かります(※)。
タンパク質 | 脂 質 | |
---|---|---|
トド肉 |
23.8g |
2.7g |
クジラ赤身肉 |
24.1g |
0.4g |
豚肉(肩ロース) |
20.9g |
3.8g |
牛肉(肩ロース) |
20.4g |
4.6g |
またトド肉は、タウリンやグルタミン、アラニン、アンセリン、カルノシンなど、健康を維持する上で欠かせないアミノ酸も豊富です(※)。
アミノ酸 | 可食部100gあたりの含有量 |
---|---|
タウリン |
18mg |
グルタミン |
107mg |
アラニン |
47mg |
アンセリン |
183mg |
カルノシン |
105mg |
その他 |
93mg |
特にアンセリンやカルノシンには、抗酸化作用や疲労回復作用があることが知られており、トド肉を食べることでさまざまな健康効果が期待できます。
※ 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構「加工原料としてのトド肉の成分分析」p2
脂質は多いが、不飽和脂肪酸の比率が高い
トド肉は、鹿肉などの他のジビエと比べると、脂質(脂肪分)が比較的多いお肉です。しかし、脂質の構成成分を分析すると、健康維持に欠かせない不飽和脂肪酸の一種、n-3系脂肪酸の比率が高いことが分かっています。
特に、健康効果が注目されるエイコサペンタエン酸(EPA)や、ドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富な点は注目したいポイントです。EPAやDHAは体内で合成できないため、必須脂肪酸とも呼ばれています。トド肉なら、必須脂肪酸を効率的に摂取することが可能です。
トド肉を美味しく食べる方法
トド肉を美味しく食べる方法は2つあります。
- 狩猟直後にしっかり血抜きされたトド肉を選ぶ
- 大和煮やカレーなど、濃い味付けをする
ジビエ特有の臭みが苦手な方は、狩猟直後にしっかりと血抜きされたトド肉を選びましょう。自分で調理する際は、事前に時間をかけて下処理する必要もあります。
トド肉の調理方法は、醤油味でじっくり煮込む大和煮や、香辛料をふんだんに使用したカレーがおすすめです。濃い味付けにすることでトド肉の生臭さを軽減し、美味しく食べられるでしょう。
狩猟直後にしっかり血抜きされたトド肉を選ぶ
トド肉は下処理しないまま調理すると、強い獣臭さや鉄臭さを感じる可能性があります。「トド肉は臭い」と言われることがあるのは、血抜きが不足しているからです。
トドやアザラシなどの海棲哺乳類は、潜水時間を長くするため、筋肉に多くの血液を取り込めるようになっています。そのまま焼くと血が焦げてしまうため、トド肉を美味しく食べるには、狩猟直後の血抜きが重要です。
トド肉の血抜き方法は、地域によって異なります。例えば、礼文島ではトド肉を一旦冷凍し、薄くスライスして煮込んでから、冷水で洗い下処理します。
上手に血抜きされたトド肉なら、ジビエ特有の臭みが苦手な方でも美味しく食べられるでしょう。ご家庭で調理する場合は、トド肉をおろした玉ねぎと一緒に漬け込むのがおすすめです。玉ねぎに含まれる成分が作用し、トド肉の生臭さを軽減できます。

大和煮やカレーなど、濃い味付けをする
トド肉を調理する場合は、大和煮やカレーなど、濃い味付けがおすすめです。
特にお肉を醤油や砂糖、生姜などで味付けし、じっくりと煮込む大和煮は、トド肉の代表的な調理方法の一つです。トド肉の大和煮は、土産物の缶詰としても広く流通しています。
またトド肉を使った「トドカレー」も、北海道のご当地カレーとして人気です。クローブやナツメグ、シナモンなどのスパイスと一緒に煮込むため、トド肉の臭みを軽減できます。
トド肉を食べてみたい方は、ジビエレストランの「あまからくまから」にご来店ください。年間の駆除頭数制限がある、希少なトド肉を提供しています。しっかりと下処理されているため、臭みの少ないトド肉をお楽しみいただけます。
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