≪食べる動物図鑑 キョン≫
キョンは中国南東部や台湾から人為的に持ち込まれた外来種です。2005年には環境省により、生態系に被害を及ぼす恐れのある「特定外来生物」に指定されました(※)。
近年、キョンは千葉県を中心として大量に繁殖しており、食害や鳴き声による騒音被害などが問題となっています。一方で、キョンの肉は台湾などで高級食材として扱われており、鹿肉のような味を楽しめることから、食肉(ジビエ)としての利活用も模索されている状況です。実際に、千葉県内の一部の飲食店では、地域の有害鳥獣対策と食材の有効活用を兼ねて、キョンの肉を使用したジビエ料理を提供しています。
キョンの肉は、台湾などで古くから珍重されてきた高級食材です。日本でも、千葉県がふるさと納税の返礼品としてキョン肉を提供しており、赤みが多く上品な味わいが人気を集めています。
焼肉や煮込み、鍋にしても美味しく、地鶏と鹿肉のいいところを集めたようなお肉になります。
あまからくまからでは炭火焼やロースト、お鍋、や煮込み、パスタなどいろいろな料理に使われています。(季節メニューを含みます。)
『キョンとハクビシンの駆除応援鍋』
昆布で出汁をとり、白菜や人参、ごぼう、大根、かぼちゃ、ねぎ、マイタケと鍋にいれる。
味噌を上に乗せて煮ることで、煮えた時に味噌のいい香りが漂います。
キョン、やハクビシンの肉は薄切りにして盛り付ける。
『キョンのステーキ』
キョンの肉は筋をとり、ステーキカットする。使用する部位は背中のロース、もも肉です。
ばら肉や腕肉、くび肉などは煮込みにします。
フライパンに油をひき、休ませながら時間をかけて焼いていきます。
やきあがったら、野菜と一緒に盛り付けます。
ソースはフルーツ系がよくあいます。
バルサミコ酢を煮詰めた後、お好みのフルーツジャムと混ぜて火をとおしてください。
しかし、キョンの食肉利用には、まだまだ多くの課題が残されています。
キョンは体が小さいため、捕獲した個体から肉があまり取れません。買い取りをする飲食店も少なく、処理施設の維持管理が困難になっており、せっかく駆除しても大部分が廃棄処分されているのが現状です。
美味しいキョン肉を普及させるには、消費者の皆さまが飲食店に足を運び、たくさん食べていただく必要があります。日本橋人形町と浅草にある「あまからくまから」でもキョン肉を提供しているため、ぜひご来店ください。
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外来種のキョンによる被害や駆除方法を詳しく解説
外来種のキョンは、中国南東部や台湾に自然分布しているシカ科の哺乳類です。日本でも、千葉県勝浦市の私立観光施設から逃げ出した個体が繁殖し、1960~80年代にかけて定着したと言われています(※)。
この記事では、外来種であるキョンの生態や、国内の被害状況、一般的な駆除方法について解説します。
シカ科の仲間で中型犬と同じくらいの大きさ
キョンは分類上、シカ科の仲間です。肩までの高さ(体高)は約40cm、体重は7~10kgほどと、中型犬と同じくらいの大きさをしています(※)。
オスは額に2本の黒線があり、12~15cm程度の角が生えています。メスに角はなく、目の上から頭頂部にかけて黒い菱形の模様があります。
※ 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル-特定外来生物編-」p75
メスは早ければ生後半年で妊娠し、一年を通じて繁殖する
キョンは繁殖力が高く、自治体も防除対策に苦慮しています。
キョンのメスは1産1子ですが、早ければ生後半年程度で妊娠し、出産後すぐに発情することが知られています。出産時期は5~10月にピークを迎えますが、一年を通じて繁殖を行う生き物です(※)。
こうした生態から、キョンの個体数は年々増加しており、自然増加率(出産などによる1年あたりの増加割合)は34%と推定されています(※)。
千葉県でキョンが定着した自治体は17市町に拡大
キョンの生息地は、千葉県の各地で急速に広がっています。キョンの定着が確認された自治体は、2004年の調査では5市町にとどまりましたが、2020年には17市町に拡大しました(※)。
2019年の推定生息数は2万2,002~7万5,442頭で、現在も多くの自治体で増えつづけています(※)。近年は房総半島を北上し、茨城県でも相次ぎ個体が確認されており、キョンの防除対策は急務となっています。
キョンによる被害状況
キョンの生息分布が拡大した結果、千葉県では農作物の食害や生活環境の悪化など、さまざまな被害が発生しています。ここでは、キョンによる被害状況について解説します。
野菜を中心に水稲や豆類、イモ類などが食害に
キョンによる被害のうち、代表的なものが農作物の食害です。千葉県では、野菜を中心に水稲や豆類、イモ類、果樹、特用林産物などが被害を受けています。被害額はイノシシや鹿と比べると少ないものの、毎年100万円から200万円程度です(※)。
また伊豆大島の被害も大きく、特産の葉物野菜であるアシタバや、椿油の精製に使われるツバキの葉、キュウリなどの農作物が食害に遭っています。
独特の鳴き声に対する苦情や生活環境への被害も
キョンは「ホエジカ」という別名があるように、「ギャー」という悲鳴のような声で鳴く生き物です。明け方や夕暮れ時によく活動するため、鳴き声による騒音被害が問題となっています。
また住宅地周辺に出没し、芝や植木、花壇の花(パンジーやカサブランカなど)を採食する被害も報告されています。
在来種のニホンジカなどへの影響も懸念されている
キョンの生息域には、在来種のニホンジカが暮らしています。餌をめぐって間接的な競争が起きている可能性があり、在来の生態系への悪影響が懸念されています。
またキョンはニホンジカが好んで食べない、下層植生(低木や下草など)を採食する生き物です。キョンの生息数が増えた結果、森林の更新サイクルの阻害や、チョウ類が産卵する植物種の消失などの被害が報告されています。
キョンを駆除する一般的な方法
キョンの主な駆除方法は、銃器による捕獲と、わなによる捕獲の2つです。主にわなによる捕獲が行われており、全体の8割以上がくくりわなによるものとなっています(※)。
ここでは、キョンを駆除する一般的な方法について解説します。
銃器による捕獲
キョンの捕獲には、イノシシや鹿と同様に銃器が使用されています。千葉県によると、2019年に捕獲された頭数のうち、約7%が銃器によるものです(※)。
代表的な捕獲方法には、巻き狩りや流し猟、忍び猟などがあります。
銃器による捕獲 | 特徴 |
---|---|
巻き狩り | 山に猟犬を放し、猟師が待機する場所に獲物を追い出す |
流し猟 | 徒歩で山を歩きながら、獲物に気づかれないように近づく |
忍び猟 | 車やバイクで走りながら、広範囲で獲物を探す |
わなによる捕獲
キョンの駆除には、箱わなやくくりわななど、わなによる捕獲が大きな成果を挙げています。千葉県によると、2019年に捕獲された頭数のうち、約7%が箱わなによるもの、約84%がくくりわなによるものです(※)。キョンは比較的体が小さいこともあり、大部分がくくりわなによって駆除されています。
わなによる捕獲 | 特徴 |
---|---|
箱わな(踏み板式) | 獲物が踏み板を踏むと扉が落ちる |
くくりわな(首くくりわな) | 獲物の体が入るとワイヤーが締まる |
わなによる捕獲では、キョンが通るけもの道に箱わなやくくりわなを仕掛け、誘引餌を設置する方法が一般的です。誘引餌は、伊豆大島ではアシタバ、千葉県では常緑樹のアオキやカクレミノを好むことが分かっています。
しかし、自治体による努力にもかかわらず、キョンの分布拡大や農作物などの被害に歯止めがかかっていません。キョンの防除対策を進めていくには、銃器やわなによる捕獲を増やすとともに、駆除した個体を食肉(ジビエ)などに利活用し、猟師の方が活動しやすい環境をつくることが大切です。
何度も言ってしまいますが、キョンの美味しいお肉をもっと流通させるには、消費者の皆さまのご協力が欠かせません。そんな思いから、ジビエ料理専門店の「あまからくまから」では、外来種のキョンやハクビシンの肉を楽しめる「外来種駆除応援鍋」を提供しています。
台湾では高級食材として知られるキョンを食べてみたい方、有害鳥獣を廃棄処分するのではなく、食べて応援したい方はぜひご来店ください。
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