お菓子のような芳醇な香りの穴熊(アナグマ)をジビエ専門店の店主が解説
「これまで食べたジビエの中で、何が一番美味しかったですか?」
熟練の猟師さんや、全国を巡る美食家にそう問いかけたとき、多くの人が声を揃えて名を挙げる動物がいます。それが「穴熊(アナグマ)」です。
見た目はタヌキによく似ていますが、味の格は別次元。
その最大の特徴は、「とろけるような脂の甘み(あま)」にあります。
冬眠を控えた秋から冬にかけて、ナッツや果実をたっぷり食べて蓄えられたその脂は、口に入れた瞬間にサラリと溶け、まるでお菓子のような芳醇な香りが鼻を抜けます。「これ、本当にお肉の脂?」と疑ってしまうほどの衝撃が、そこにはあります。
今回は、ジビエ界で最高峰の希少価値を誇り、「一度食べたら戻れない」と言わしめる穴熊のディープな魅力をご紹介します。
「タヌキとは大違い!穴熊が『別格』と呼ばれる理由」
古くから日本で「ムジナ(同じ穴の狢)」と一括りにされてきたタヌキとアナグマ。見た目こそ似ていますが、料理の世界、特にジビエの世界では、両者は「月とスッポン」と言い切れるほどの差があります。
なぜアナグマだけが「ジビエ界の至宝」と呼ばれ、別格扱いされるのか?その秘密を解き明かします。
1. そもそも「科」が違う
まず驚かれるのが、この2種類は動物学的に全くの別物だということです。
- タヌキ: イヌ科(イヌやキツネの仲間)
- アナグマ: イタチ科(ラッコやテンの仲間)
実は、ジビエの世界では「イタチ科の動物は脂が旨い」というのが通説です。アナグマはそのイタチ科の中でも、特に冬眠に向けて良質な脂を蓄える性質があるため、群を抜いて美味しくなるのです。
2. 「食生活」が味を決める
「食べたものが肉の味になる」のがジビエの鉄則。ここがタヌキとの決定的な差です。
- タヌキ: 雑食性が非常に強く、時には腐肉や生ゴミなども口にします。そのため、個体によっては獣臭さが強く、食用には高度な処理が必要です。
- アナグマ: 主食は木の実、そして果実です。特に山に実る果実をたっぷり食べているため、その身に嫌な臭みがつくことがなく、むしろフルーティーな香りさえ漂います。
3. 「ハチミツ」と称される魔法の脂
アナグマの最大の特徴は、何といってもその「真っ白な脂身」です。 一見「脂っこそう…」と感じるかもしれませんが、一口食べればその疑念は吹き飛びます。アナグマの脂は融点(溶ける温度)が非常に低く、口に入れた瞬間にサラリと溶けて、上品な甘みだけを残して消えていきます。
しかしながら、秋に柿をたっぷり食べたアナグマの脂は黄色っぽくなりますが、最高の味わいです。
この甘みが、ナッツやハチミツのような芳醇なコクを感じさせることから、通の間では「アナグマを一度食べると、もう他の肉では満足できなくなる」とさえ言われています。
4. 【幻のジビエ】なぜ穴熊は「猟師泣かせの希少性」と言われるのか?
なぜ、これほどまでに手に入らないのか? そこには、熟練の猟師たちをも悩ませる「高いハードル」があります。
旬が「一瞬」しかない
穴熊が最高に美味しくなるのは、冬眠に向けて体にたっぷりと脂を蓄える11月〜12月にかけてのわずか1ヶ月ほどです。 冬眠に入ってしまうと、せっかく蓄えた脂をエネルギーとして消費してしまうため、味が落ちてしまいます。「最高の状態」を仕留められるチャンスは、1年のうちでほんの一瞬。このタイミングを逃すと、また来年まで待つしかないのです。
解体に「通常の3倍」の手間がかかる
実は、ここが一番の「猟師泣かせ」なポイントです。 穴熊の最大の特徴である「分厚い脂」は、実は解体が非常に大変。脂が柔らかすぎて、ナイフが滑りやすく、少しでも手元が狂うとお肉を傷つけてしまいます。 通常の動物の何倍もの時間をかけ、神経を研ぎ澄ませて丁寧に皮を剥がなければ、あの美しい真っ白な脂は保てません。この手間の多さから、多くの猟師さんが「自分たちで食べる分だけで十分だ(出荷するのは大変すぎる)」と、市場に出すのをためらうほどなのです。
🍽 店主からの一言(あまからくまから流・楽しみ方)
当店でアナグマが入荷した際は、ぜひ「すき焼き」や「たたき」で召し上がってみてください。 タヌキとは似て非なる、アナグマだけの「あま〜い」感動を体験していただけるはずです。
「本当にこれが野生の肉なの?」という驚きを、ぜひ当店で味わってください。



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