アライグマは北海道から沖縄まで、日本全国に分布する中型の哺乳類です。2004年に特定外来生物に指定されており、農作物に被害をもたらす害獣として積極的に駆除されています(※)。
しかし、アライグマの肉は意外と美味しいのが特徴です。加えて近年では、有害鳥獣を捕獲する猟師さんや食肉処理施設を応援するため、アライグマ肉を提供するジビエレストランも増えてきました。
この記事では、アライグマ肉の味・風味や、美味しく食べる方法、ハクビシンやアナグマなどの他のジビエとの違いについて解説します。
※ 環境省 中国四国地方環境事務所「アライグマ等防除ハンドブック」p3
アライグマ肉の味や風味
アライグマはもともと日本には生息していなかった外来生物です。1970年代後半にアライグマの飼育ブームが起き、捨てられたり逃げ出したりした個体が日本各地で野生化しました(※)。
アライグマの肉は、ジビエの中では癖が少なく、肉質もやわらかいと言われています。ここでは、アライグマ肉を一度食べてみたい方向けに、気になる味や風味を3つの視点で解説します。
- 肉質は地鶏のようにやわらかく、比較的食べやすい
- 一年を通じて食べられるが、脂が乗る冬の時期が美味しい
- 雑食性の動物のため、肉の味や風味は個体差が大きい
肉質は地鶏のようにやわらかく、比較的食べやすい
アライグマの肉質を一言で表すなら、「地鶏のような食感」です。野生鳥獣の肉であるため、牛や豚などの畜肉と比べると特有の癖はあるものの、比較的食べやすいとされています。熟練の猟師さんがしっかりと下処理をした肉なら、獣臭さもほとんどありません。
特に春や夏に捕獲されたアライグマは、赤身の割合が多く、鶏肉のようなあっさりとした味わいを楽しめるでしょう。同じ中型の哺乳類のアナグマやハクビシンと並んで、アライグマ肉はジビエファンから根強い人気を獲得しつつあります。
一年を通じて食べられるが、脂が乗る冬の時期が美味しい
アライグマの肉は一年を通じて食べられますが、旬とされるのは10月から3月にかけての時期です。
アライグマは冬眠をしませんが、厳しい冬を乗り越えるため、寒い季節になると体に脂肪分を蓄えます。特に12月~2月に捕獲されたアライグマはたっぷりと脂が乗っており、煮ても焼いても美味しく食べられます。
アライグマをはじめとしたジビエの脂は、畜肉よりも融点が低い傾向にあり、口に入れるととろけるのが特徴です。ほのかな甘みがあって後味もくどくないため、牛肉や豚肉の脂身が苦手な方でも食べられます。
雑食性の動物のため、肉の味や風味は個体差が大きい
アライグマは雑食性の動物のため、肉の味や風味には個体差があります。
アライグマの食性は、果実や木の実、野菜、穀類、やわらかい茎や地下茎などの植物質が中心ですが、動物性の餌も好みます(※)。人家周辺や都市部に出没するアライグマの場合、雑多なものを口にしている可能性が高く、肉の臭みが強い個体も少なからず存在します。
一方、果実食が中心の個体であれば、嫌な獣臭さはほとんどありません。たとえば、千葉県のいすみ市で捕獲されるアライグマは、秋から冬にかけて柿を主食としており、癖が少なく食べやすいことで知られています。
アライグマの肉は、その個体が食べてきたものによって肉の味や風味が異なるという点を知っておきましょう。
※ 環境省「アライグマ等防除ハンドブック 第1編」p11-12
アライグマを美味しく食べる方法
ここでは、アライグマを美味しく食べる方法を3つ紹介します。
- アライグマの味噌鍋
- アライグマのロースト
- アライグマコロッケ
アライグマの味噌鍋
アライグマ肉の代表的な食べ方の一つが、味噌鍋です。味噌の風味でジビエ特有の癖が軽減されるため、初心者の方でも美味しく食べられます。
ジビエを普段から口にしている方は、しゃぶしゃぶにするのもおすすめです。ポン酢との相性が良く、口どけの良い脂の甘さを引き立てます。
ただし、ご家庭でしゃぶしゃぶにする場合は、生のアライグマ肉をつかんだ箸でそのまま食べないようにするなど、衛生面に注意を払いながら楽しみましょう。
アライグマのロースト
アライグマ肉を美味しく味わうなら、焼肉やローストも定番です。アライグマの原産地である北米でも、アライグマ肉をBBQにして食べる風習が一部地域に残っています。
調理方法も簡単なため、ご家庭でアライグマ肉を食べる場合にもぴったりです。まずアライグマ肉をカットし、塩や粗挽き胡椒、少量のおろしにんにくなどで揉み込み、下味を付けましょう。
肉を焼く際は炭火焼きか、焼肉ロースターの使用をおすすめします。フライパンでの調理も可能ですが、ホットプレートとの相性はあまり良くありません。
なお、野生鳥獣の肉には食中毒のリスクがあるため、ご家庭で調理する際はしっかりと火を通してください。肉の中心部を75度で1分以上加熱するのが目安です(※)。
アライグマコロッケ
アライグマコロッケも、おすすめの調理方法の一つです。アライグマ肉を粗挽きミンチにして、コロッケのタネに加えるだけで、牛肉とは一風変わった味わいになります。
アライグマの肉と相性の良い食材の一つが、ブルーチーズです。コロッケのタネの中心にブルーチーズを入れると、美味しいチーズインコロッケを楽しめます。
アライグマと他のジビエの違い
アライグマの肉とよく比較されるのが、同じ中型の哺乳類であるハクビシンやアナグマ、タヌキです。特にハクビシンやアナグマは、ジビエレストランでも定番のメニューであり、食べたことがある方もいるでしょう。
ここでは、アライグマの肉と、ハクビシン・アナグマ・タヌキの肉の違いを紹介します。
アライグマとハクビシンの肉の違い
ハクビシンの肉は、中型の哺乳類の中でも美味と称されます。淡白であっさりとした赤身や、口どけの良い脂の味わいはアライグマ肉と似ていますが、アライグマ以上の人気を誇るジビエです。やや筋が多く、歯ごたえのある食感がアライグマ肉とは異なります。
ハクビシンの肉は、ジビエ特有の癖がほとんどなく、ジビエ初心者向きの肉でもあります。「ジビエに興味があるけど、初めてだから口に合うか不安」という方は、ハクビシンの肉を試してみるのがおすすめです。
アライグマとアナグマの肉の違い
ハクビシンと並んで人気があるのが、アナグマの肉です。アナグマは煮ても焼いても美味しく、すき焼きなどの鍋料理はもちろん、炭火焼きや角煮、ジビエ専門店ではお刺身などのメニューも楽しめます。
特に柿やリンゴ、ぶどうなどの果物を好んで食べた個体は、フルーティーな香りや風味が感じられ、脂の味わいは「イノシシよりも美味しい」と評する方もいるほどです。アライグマよりも脂身が多いため、こってりとした脂の味わいを堪能したい方に向いています。
アライグマとタヌキの肉の違い
タヌキはアライグマと同じ中型の哺乳類ですが、ややジビエ上級者向けです。強烈な獣臭さが感じられるため、ジビエを初めて食べる方にはおすすめできません。
一方、癖と同じくらい旨味も強く、調理方法によってはアナグマやハクビシンに匹敵するポテンシャルがあります。普段からジビエを食べ慣れている方は、ぜひ一度挑戦してみてください。
秋から冬にかけてのアライグマの肉は、たっぷりと脂が乗っており絶品です。アライグマ肉はまだまだ納品数が少ないため、食べてみたい方はジビエ専門店を利用するとよいでしょう。「あまからくまから」では、初心者でも楽しめるジビエ料理を提供しています。良質な野生鳥獣の美味しさを体験したい方は、ぜひお気軽にご来店ください。
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